岩手県北上市で、川をさかのぼるという石。二十年で一町も移ったと語られた。

生石とはどんな妖怪か
生石はひとことで言えば、動く石です。岩手県北上市の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、橘正一「昭和の伝説四題」(『旅と伝説』2巻10号・通巻22号、1929年、28頁)を典拠に、次のように記します。
石が川をさかのぼることがあるという。和賀郡の川に巨大な石がある。これは、和賀川が大水にあった時には、洞の中にあったものが、20年後には1町も遡って今の場所に来たのだといわれている。そのような石を生石という。
一町は約109メートルです。 二十年で百メートルあまり、川上へ動いたという語り方になります。
流されて下るという話とは逆です。 さかのぼるところが、この石の異様さです。
題は「昭和の伝説四題」。 昭和に入ってから語られていた話として記録されています。
生石の漢字表記と読み方
読みは「いきいし」です。
「生」の字が入るのは、生きているように動くからです。成長する石、動く石の話は各地にあります。
大きさは「巨大な石」とだけ記録されています。 重さや形は書かれていません。
生石(いきいし)
日文研データベースが示す漢字表記。
イキイシ(いきいし)
同データベースの呼称読み。
生石の姿と特徴
生石は、川にある巨大な石です。
場所 … 和賀郡の川(和賀川)。
動き … 川をさかのぼる。
距離 … 二十年で一町(約109メートル)。
きっかけ … 大水。
顔や手足はありません。音を立てる、光るといった記述もありません。
動いた、という一点だけが語られています。
生石の伝承記録
大水のあと、上流に移っていた
石はもともと洞の中にありました。
和賀川が大水にあったときを境に、二十年後には一町も遡って今の場所に来たといいます。
一町は約109メートル。 大人の足で二分ほどの距離です。
水は下へ流れます。 石が上流へ動くのは、流れに逆らうことになります。
そこに、この石が「生きている」と言われる理由があります。
動く石は各地にある
石が動く、育つという話は各地に伝わります。夜に鳴く石、大きくなる石、元の場所へ戻る石。
前に収めた京都の阿弥陀ヶ淵では、仏が元の場所へ戻されたという形でした。
生石の場合、動く距離と年数がはっきりしています。二十年で一町。
測ったように語られているところが、この記録の面白さです。
生石の伝承地域
公的データベースの地域欄は岩手県北上市を示します。記録は和賀郡の川、すなわち和賀川を指します。
石の位置は書かれていないため、地図で指せるのは市の範囲までです。
生石の正体と考えられているもの
生石の正体は、石です。怪異にあたるのは、それが上流へ動くという点です。
大水のたびに川の姿は変わります。 石が現れたり、隠れたりすることもあります。
それを「同じ石が動いた」と受け取れば、石は生きていることになります。
資料は、そこまでの説明をしていません。 残っているのは、二十年で一町という数字と、生石という呼び名です。
生石が記録された資料
生石を単独で扱った本は見当たりません。読めるのは『旅と伝説』の記事です。
題の「昭和の伝説」が示すとおり、新しく生まれた話を集めた記事です。古い伝説だけでなく、当時の語りを拾っています。
生石が記録された民俗資料
昭和の伝説四題
橘正一が『旅と伝説』2巻10号(1929年)に載せた中心資料です。
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生石についてよくある質問
生石とは何ですか。
岩手県北上市で、川をさかのぼるとされた巨大な石です。二十年で一町も遡ったと語られました。
一町はどのくらいですか。
約109メートルです。
なぜ上流へ動くのですか。
理由は記録されていません。大水のあとに位置が変わっていたと語られています。
石は今もありますか。
資料に現在地の記載はありません。記録は和賀郡の川とだけ記します。
生石と併せて覚えたい言葉・用語
一町(いっちょう)
約109メートル。石が遡ったとされる距離です。
和賀川(わががわ)
岩手県北上市を流れる川。生石があるとされます。
旅と伝説(たびとでんせつ)
戦前の民俗雑誌。生石の記録が載りました。
生石の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。