風を受けて木々を飛び渡る獣。叩き殺しても風に当てると生き返る。

鳥山石燕 「今昔百鬼拾遺 風狸」 1781年 / パブリックドメイン 出典
風狸とはどんな妖怪か
風狸はひとことで言えば、風で生き返る獣です。
中国の『本草綱目』、日本の鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』、根岸鎮衛の『耳嚢』、『和漢三才図会』など、江戸時代の各種文献に名が見られます。
異称も多く、風母(ふうぼ)、風生獣(ふうせいじゅう)、平猴(へいこう)などが古典に見つかります。
『本草綱目』はこれらをまとめて解説しました。
嶺南地方の南部(現在の広西や広東)、および蜀(四川)の西部に生息していたとされます。
大きさはヤマネコ、タヌキ、カワウソ程度とするのが主です。
風狸の漢字表記と読み方
読みは「ふうり」です。
『和漢三才図会』は「風貍(かぜたぬき)」と訓じました。ただし「貍」は斑点のあるヤマネコ類を意味するため、現代の漢学者からすれば「かぜヤマネコ」とすべきとされます。
この図鑑には、風に関わるものとして鎌鼬も収めています。『広倭本草』(1759年刊)は、風狸と同じものをカマイタチだとみなしました。
風狸(ふうり)
石燕の絵に添えられた表記。
風貍(ふうり)
『本草綱目』四庫全書本での表記。
風母(ふうぼ)
『太平御覧』にある異称。
風狸の姿と特徴
石燕の絵の風狸は、古木にとりついて飛び移ろうとする姿です。
体色 … 青色(緑色)。
模様 … ヒョウのような斑。
尾 … 無い、あるいはごく短い。
顔 … 小ぶりのサル似。目が赤い。
大きさ … ヤマネコやタヌキほど。
絵では、斑のある獣が木の幹をつたい、下には水の流れが描かれています。
風狸が登場する古典の物語
風を孕んで飛ぶ
陳蔵器は、風狸は兎に似て小さいと言っています。
風を孕んで飛び、木々を渡り、果物を食べるといいます。
風生獣が好んで餌とするのはクモです。
昼は蝟(ハリネズミ)のようにじっと丸くなってうつ伏せになり、夜になると活発化して敏捷となる==とも記されます。
「風が出ると空中を飛ぶ」「巌を越え樹を過ぎて鳥の飛ぶごとし」ともあります。
叩いても風で生き返る
人に網で捕らえられると、恥じらうような素振りをし、憐れみを請うような仕草をするといいます。
風狸類は、打ち叩くとあっけなく死んでしまいます。
ところが、風を受ければ蘇生します。
死んだと見せかけて、じつは生きているわけです。
確実に仕留めるには、石菖蒲(セキショウ)の根で鼻を塞ぐとされました。
『耳嚢』は日本にもいると書く
『和漢三才図会』では、日本に風狸はいないとされています。
しかし『耳嚢』によれば、日本でもときおり出くわすとし、「狸の一種」であるとみなしています。
『広倭本草』(1759年刊)は、和名をカマイタチだとみなしました。
能州(能登国)に多く現れ、都市や民家で夜座っているとどこともなく現れ傷つけていくと記します。
同じ獣が、土地ごとに違う名で呼ばれてきたことになります。
風狸の伝承地域
風狸をまつる社として広く知られたものは見当たりません。
古典が示す生息地は、嶺南地方の南部と蜀の西です。日本での目撃は『耳嚢』が伝えるのみです。
風狸の正体と考えられているもの
風狸の正体には、いくつもの説があります。
ヒヨケザル(皮翼目)に同定する仮説がある一方、ジャコウネコ科やスローロリス属を候補に挙げる学者もいます。
古典の記述も一つにまとまりません。 ヒョウ似、サル似、ウサギ似と、書物ごとに違います。
香料を食らうという狤𤟎(きっくつ)という動物も、『本草綱目』では風狸と同じものとされました。
ただし『酉陽雑俎』では別項で語られており、外見の特徴も相容れません。
風狸が登場する作品
風狸は、石燕の絵と『和漢三才図会』で読めます。
大もとは『本草綱目』で、薬になる獣として扱われています。尿がらい病に薬効があると主張されたという記述も残ります。
風狸が登場する古典
本草綱目
李時珍、1596年。風母・風生獣・平猴をまとめて解説します。
耳嚢
根岸鎮衛、江戸期の随筆。日本でもときおり出くわすと記します。
風狸が登場する研究
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風狸についてよくある質問
風狸とは何ですか。
中国および日本の妖怪です。風を受けて木々を飛び渡る獣とされます。
なぜ生き返るのですか。
叩けば簡単に絶命しますが、風を受ければ蘇生すると記されています。
確実に仕留める方法はありますか。
石菖蒲(セキショウ)の根で鼻を塞ぐと死ぬとされます。
日本にもいるのですか。
『和漢三才図会』はいないとしますが、『耳嚢』はときおり出くわすと記します。
風狸と併せて覚えたい言葉・用語
風生獣(ふうせいじゅう)
風狸の異称の一つ。クモを好んで食べるとされます。
石菖蒲(せきしょうぶ)
水辺に生える草。その根で鼻を塞ぐと死ぬとされました。
嶺南(れいなん)
五嶺より南の地。風狸の生息地とされます。