墓場の土から作った人形を祀ると家が富む。しかし持ち主の死にも離れないと恐れられた富山の憑き物。

人形神とはどんな妖怪か
人形神は、墓場の土から作る憑き物です。富山に伝わります。姿は土の人形。千人、三千人もの足で土を踏ませる作り方と、小さな人形を千体煮て一体だけを選ぶ作り方が伝わります。
家に迎えれば富を授けます。けれども、持ち主が死を迎えても人形神は離れません。祀った者は最後に地獄へ落ちるとされ、願いがかなった後まで関係が切れない妖怪として恐れられました。
人形神の漢字表記と読み方
人形神は「ひんながみ」と読みます。1949年の佐伯安一「砺波のヒンナ神」では、呼称を「ヒンナ神(ひんなかみ)」としています。コチョボはすべての人形神を指す名ではなく、千体の中から浮かび上がった一体だけの呼び名です。
人形神(ひんながみ)
土から作る人形の姿を表す漢字表記。
ヒンナ神(ひんなかみ)
佐伯安一「砺波のヒンナ神」に収録された呼称。
コチョボ(こちょぼ)
千体の人形を煮る話で、一体だけ浮かび上がった人形の名。
人形神の姿と特徴
姿は土で作った人形です。コチョボの話では三寸ほど、現在の長さで約9センチの人形を千体用意します。墓場の土から作る二つの話には大きさが示されていません。
人形神の伝承記録
墓場の土を集め、大勢の足で踏ませる
人形神づくりは、墓場の土を持ち帰るところから始まります。
一つの話では、その土を三千人に踏ませます。一人や二人ではなく、三千人。大勢の足で踏み固めた土を集め、そこから一体の人形を作ります。
別の話では、七つの村にある七つの墓場から土を集めました。こちらは土を人の血でこね、千人に踏ませてから人の形にします。材料と人数は違っても、墓場から運び出した土を多くの足に踏ませ、一体の人形へ変えるところは同じです。
千体を鍋で煮ると、一体だけが浮かび上がる
もう一つの話では、まず千体を作ります。三寸ほどの小さなヒンナを、千体用意します。
千体すべてを一つの鍋へ入れ、火にかけます。煮ていくうちに、水面へ浮かんでくる人形は一体だけ。その一体がコチョボです。
コチョボには、千体分の霊が籠もるとされました。数多く作った中から、鍋の中でただ一体が選び出されます。
家は富む。しかし死ぬ時にも離れない
人形神を家に祀ると、その家は富裕になるといわれました。墓場の土を集め、人の足で踏ませ、ようやく作り上げた人形が家へ富を運びます。
けれど、話はそこで終わりません。富をもたらした人形神は、持ち主が死を迎えても離れようとしません。祀った者は、ついには地獄へ落ちると語られました。
願いをかなえたら役目を終える守りではなく、死の間際までついてくる憑き物。富を得た後に逃げられなくなるところまでが、人形神の話です。
人形神の伝承地域
ヒンナ神は富山県の伝承です。論文名には砺波とありますが、公開されている地域欄は富山県までで、市郡や町村は示されていません。
人形神の正体と考えられているもの
人形神は、家を富ませる力と、祀った者を死の時まで離さない執着が一体になった憑き物です。恵みだけを受け取り、都合よく縁を切ることはできません。
人形神が登場する作品
人形神は、作り方だけが詳しく伝わる憑き物です。
墓場の土を三千人に踏ませる。七つの墓場の土を人の血でこね、千人に踏ませる。三寸の人形を千体煮て、浮いた一体を採る。 手順は具体的なのに、その後どんな姿になったのかは語られません。
家は富みます。しかし持ち主が死を迎えても離れず、祀った者は地獄へ落ちるとされました。富を得た後に逃げられなくなるところまでが、この話です。
人形神が登場する民俗学
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人形神についてよくある質問
人形神とはどんな妖怪ですか。
墓場の土から作った人形を祀ると家が富みますが、持ち主が死ぬ時にも離れないとされた憑き物です。
人形神は何と読みますか。
人形神は「ひんながみ」と読みます。佐伯安一の論文にあるヒンナ神は「ひんなかみ」です。
人形神はどうやって作りますか。
墓場の土を三千人に踏ませる話、七つの墓場の土を人の血でこねて千人に踏ませる話、三寸ほどの人形を千体煮る話があります。
コチョボとは何ですか。
千体の小さなヒンナを鍋で煮た時、一体だけ浮かび上がる人形です。千体分の霊が籠もるとされます。
人形神と併せて覚えたい言葉・用語
ヒンナ神(ひんなかみ)
富山県で墓場の土から作り、富を願って祀るとされた憑き物。
コチョボ(こちょぼ)
千体の人形を煮る話で、一体だけ浮かび上がるヒンナの名。
三寸(さんずん)
一寸を約3.03センチとする長さで、三寸は約9センチ。
人形神の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。