栃木県益子町で、夜中に餅の粉をはたく音が近づくと財産が入り、遠ざかると運が落ちるとされた怪異。
シヅカモチとはどんな妖怪か
シヅカモチはひとことで言えば、運を運んでくる音です。栃木県芳賀郡益子町の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、柳田国男「妖怪名彙」(『民間伝承』、1938年)を典拠に、夜中にこつこつと餅の粉をはたくような音が聞こえると記します。
大切なのは、音の向きです。近づいてくるのを「搗き込まれる」、離れていくのを「搗き出される」といいます。
そして、静か餅を搗き出されると運が落ちる。逆に、搗き込まれた人は箕を後ろ手に出すと財産が入るとも語られました。この音を聞いた人は長者になるという話もあります。
姿はありません。 聞こえるのは音だけで、向きによって吉凶が変わります。
シヅカモチの漢字表記と読み方
読みは「しづかもち」、いまの書き方では「しずかもち」です。
「静か」と「餅」が組み合わさっています。音が聞こえるのに、誰も餅を搗いていないという不思議さが、この名に表れています。
餅を搗く音は、祝いや年越しの音です。その音が夜中に、どこからともなく聞こえます。
シヅカモチ(しづかもち)
日文研データベースが示す呼称。
静か餅(しずかもち)
記録の本文で使われている漢字交じりの書き方。
シヅカモチの姿と特徴
シヅカモチに姿はありません。記録にあるのは、音と向きと作法です。
音 … こつこつと餅の粉をはたくような音。
時 … 夜中。
近づく … 「搗き込まれる」。財産が入る。
遠ざかる … 「搗き出される」。運が落ちる。
作法 … 搗き込まれたとき、箕を後ろ手に出すと財産が入る。
音が近づくか遠ざかるかで、吉と凶が入れ替わります。
シヅカモチの伝承記録
搗き込まれると財産が入る
音が近づいてくることを、この土地では搗き込まれるといいました。
そのとき、箕を後ろ手に出すと財産が入るとされます。箕は穀物をあおって殻を分ける道具で、どの農家にもありました。
振り返らずに、後ろ手に差し出す。 作法まで細かく決まっています。
この音を聞いた人は長者になるという話もあると記録されています。
搗き出されると運が落ちる
反対に、音が遠ざかることを搗き出されるといいました。こちらは運が落ちるとされます。
同じ音でありながら、向きだけで結果が反対になります。
音がこちらへ来るか、離れていくか。それを聞き分けることが、そのまま吉凶の判断でした。
避ける方法は記録されていません。 搗き出されたときにどうすればよいかは書かれていません。
シヅカモチの伝承地域
公的データベースの地域欄は栃木県芳賀郡益子町を示します。
集落や家の名は記録されていないため、地図で指せるのは町の範囲までです。
益子町周辺(ましこまちしゅうへん)
日文研データベースが示す伝承地域
益子町周辺の所在地:栃木県芳賀郡益子町
柳田国男「妖怪名彙」の地域欄に対応します。
資料には、音が聞こえたとされる集落や家の名がありません。
シヅカモチの正体と考えられているもの
シヅカモチの正体は確定していません。
記録は、誰が搗いているのかを書いていません。狐や狸のしわざとも、亡霊とも語られていません。
残っているのは、音の向きと、それに応じた作法です。近づけば箕を後ろ手に出す。遠ざかれば運が落ちる。
音を吉凶の知らせとして受け取るという点で、これは怪異であると同時に占いに近い形をしています。
餅を搗く音が富に結び付くのは、餅が祝いの食べ物だったからだと考えられます。
シヅカモチが記録された資料
シヅカモチを単独で扱った本は見当たりません。読めるのは柳田国男の「妖怪名彙」です。
音の怪異でありながら吉兆として語られる例は多くありません。怪異と福の関係を扱った本で取り上げられることがあります。
シヅカモチが記録された民俗資料
妖怪名彙
柳田国男が『民間伝承』(1938年)に載せた中心資料です。
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。
シヅカモチについてよくある質問
シヅカモチとはどんな妖怪ですか。
栃木県益子町の音の怪異です。夜中に餅の粉をはたくような音が聞こえ、近づくか遠ざかるかで吉凶が変わるとされました。
「搗き込まれる」とはどういう意味ですか。
音が近づいてくることです。このとき箕を後ろ手に出すと財産が入るといわれました。
「搗き出される」とどうなりますか。
運が落ちるとされます。避ける方法は記録されていません。
誰が餅を搗いているのですか。
記録されていません。狐や狸のしわざとも、亡霊とも書かれていません。
シヅカモチと併せて覚えたい言葉・用語
箕(み)
穀物をあおって殻を分ける農具。後ろ手に出すと財産が入るとされました。
搗き込まれる(つきこまれる)
音が近づいてくることを指す、この土地の言い方です。
搗き出される(つきだされる)
音が遠ざかることを指す言い方。運が落ちるとされました。
シヅカモチの参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。