栃木県茂木町で、犬の難産死を聞いた者が供養しないと自分が難産するとされた習わし。

Filler 「道の駅もてぎ(栃木県芳賀郡茂木町茂木)」 2003年 / CC BY-SA 3.0 出典
犬供養とはどんな妖怪か
犬供養はひとことで言えば、話を聞いた人がしなければならない供養です。栃木県芳賀郡茂木町の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、榎戸貞治郎「年神棚」(『民間伝承』4巻6号、1939年、7頁)を典拠に、次のように記します。
犬はお産が軽いといい、5月になると妊婦は戌の日に岩田帯を締めて安産を祈る。もしも、犬が難産で死んだ話を聞くと、供養しないと難産するといって、話を聞いたものが中心になって犬を供養する。これを隣村の女性が聞いたりすると、犬供養は広まっていく。
戌の日に岩田帯は、いまも行われる安産祈願です。犬の安産にあやかる形です。
その裏返しとして、犬の難産死を聞くことが危険とされました。
話が伝わるたびに、供養も広がっていきます。
犬供養の漢字表記と読み方
読みは「いぬくよう」です。
犬を供養するという言葉どおりの行いです。弔う相手は、話に聞いただけの犬であるところが特徴です。
話に聞いただけの犬を供養します。聞いてしまったことが、供養の理由になります。
犬供養(いぬくよう)
日文研データベースが示す漢字表記。
イヌクヨウ(いぬくよう)
同データベースの呼称読み。
犬供養の姿と特徴
この習わしに妖怪の姿はありません。記録にあるのは、手順と広がり方です。
前提 … 犬はお産が軽い。妊婦は五月の戌の日に岩田帯を締める。
危険 … 犬が難産で死んだ話を聞く。
しないと … 自分が難産する。
すること … 話を聞いた者が中心になって犬を供養する。
結果 … 隣村の女性が聞くと、さらに広がる。
祟る犬の霊が現れたという記述はありません。
犬供養の伝承記録
犬にあやかる安産祈願
犬はお産が軽いといわれてきました。その力にあやかるのが、戌の日の帯祝いです。
記録は、五月になると妊婦は戌の日に岩田帯を締めて安産を祈ると書きます。
岩田帯は、妊婦が腹に巻く帯です。いまも神社で安産祈願が行われています。
犬は、安産の手本でした。
聞いた者が供養する
ところが、犬が難産で死んだ話を聞くと、話が反転します。
供養しないと、自分が難産する。
聞いた者が中心になって、その犬を供養しました。
そして記録はこう続きます。 これを隣村の女性が聞いたりすると、犬供養は広まっていく。
話が伝わるほど、供養も増えていきます。 怖い話が、行事を生んでいく形です。
犬供養の伝承地域
公的データベースの地域欄は栃木県芳賀郡茂木町を示します。
供養の場所は書かれていないため、地図で指せるのは町の範囲までです。
犬供養の正体と考えられているもの
この記録に妖怪は出てきません。語られているのは、聞いてしまったことへの対処です。
犬はお産が軽いという言い伝えの裏に、難産で死んだ犬の話という危険が置かれています。
供養することで、それを解きます。
話を聞いた人が動くという形が独特です。当事者でなくても、聞けば関わることになります。
そうして、供養は村から村へ広がりました。
犬供養が記録された資料
犬供養を単独で扱った本は見当たりません。読めるのは『民間伝承』の記事です。
戌の日の帯祝いは、いまも広く行われています。出産にまつわる習わしを扱った本と併せて読むと、この供養の位置づけが見えてきます。
犬供養が記録された民俗資料
年神棚
榎戸貞治郎が『民間伝承』4巻6号(1939年)に載せた中心資料です。
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犬供養についてよくある質問
犬供養とは何ですか。
栃木県茂木町の習わしです。犬が難産で死んだ話を聞いた者が、供養しないと自分が難産するとされました。
なぜ犬なのですか。
犬はお産が軽いといわれ、安産の手本とされてきたためです。戌の日の帯祝いも同じ考えによります。
誰が供養するのですか。
話を聞いた者が中心になって供養すると記録されています。
なぜ広まるのですか。
隣村の女性が話を聞くと、その人も供養することになるためだと記録されています。
犬供養と併せて覚えたい言葉・用語
岩田帯(いわたおび)
妊婦が腹に巻く帯。戌の日に締めて安産を祈ります。
戌の日(いぬのひ)
十二支の戌にあたる日。安産祈願の日とされます。
供養(くよう)
死んだものを弔うこと。ここでは犬を弔います。
犬供養の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。