大阪府三島郡の森の奥にある井戸。住吉の漁師が鯛をとると、その鱗が映るといわれた。

Hyppolyte de Saint-Rambert 「茨木神社の本殿(大阪府茨木市元町)」 2024年 / CC BY 出典
カガミイドとはどんな妖怪か
カガミイドはひとことで言えば、遠くの海を映す井戸です。大阪府三島郡の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、辰井隆「妖怪名彙に寄す」(『民間伝承』5巻5号、1940年、5頁)を典拠に、三島郡磐手村下に「京の藪」という森があり、その奥の落窪に「鏡井戸」という井戸がある。昔からこの井戸は、住吉の漁師が鯛をとるとその鱗が映る、と言われていると記します。
住吉は大阪湾に面した海辺の地です。三島郡は内陸にあたり、海からは離れています。
その離れた井戸の水面に、海で獲れた鯛の鱗が映るというのが、この話の形です。
姿を現すものも、害をなすものも記録されていません。
カガミイドの漢字表記と読み方
読みは「かがみいど」です。
「鏡」の字が示すとおり、映すことがこの井戸の性質です。自分の顔ではなく、遠くの出来事を映します。
水面を鏡と見る言い方は各地にあります。井戸や淵をのぞくと、別の場所や未来が見えるという話は珍しくありません。
カガミイド(かがみいど)
日文研データベースが示す呼称。
鏡井戸(かがみいど)
記録の本文で使われている漢字表記。
カガミイドの姿と特徴
カガミイドは、井戸そのものです。
場所 … 「京の藪」という森の奥の落窪。
性質 … 住吉の漁師が鯛をとると、その鱗が映る。
井戸から何かが出てくるとは書かれていません。
井戸の大きさ、深さ、水の色も記録されていません。映るという一点だけが伝えられています。
カガミイドの伝承記録
「京の藪」の奥の落窪
場所の書かれ方が細かい記録です。三島郡磐手村下の「京の藪」という森、その奥の落窪。
「落窪」は、まわりより低くくぼんだ地形を指します。森の奥の、いちばん低いところに井戸があります。
そこは日の差しにくい場所です。 水面は暗く、静かだったはずです。
井戸を掘った人の名も、いつからあるかも記録されていません。
海の鱗が内陸に映る
話の核心は、住吉の漁師が鯛をとると、その鱗が映るという一点です。
住吉は海辺、三島郡は内陸です。 直接は見えない場所の出来事が、井戸の水面に現れます。
何のために映るのかは書かれていません。 漁の吉凶を知らせるとも、時期を告げるとも記録されていません。
離れた場所がつながっているという感覚だけが、この井戸に残されています。
カガミイドの伝承地域
記録は三島郡磐手村下と記します。三島郡磐手村は、現在の大阪府茨木市にあたる地域です。
森や井戸の現在地は書かれていません。 地図で指せるのは、旧村の範囲までです。
磐手周辺(いわてしゅうへん)
記録が示す旧村名にあたる地域
磐手周辺の所在地:大阪府茨木市
記録の「三島郡磐手村下」は、現在の大阪府茨木市にあたる地域です。
「京の藪」という森や井戸の現在地は、資料に書かれていません。
カガミイドの正体と考えられているもの
カガミイドの正体は確定していません。
井戸に主が棲むとも、何かが現れるとも書かれていません。 怪異は、水面に映るものという形をとります。
なぜ住吉の鯛なのかも記録されていません。 内陸の村にとって、海の漁は遠い出来事でした。
その遠さを、井戸一つで結んでいるところに、この話の面白さがあります。
カガミイドが記録された資料
カガミイドを単独で扱った本は見当たりません。読めるのは辰井隆「妖怪名彙に寄す」です。
井戸や淵が遠くを映すという話は各地にあり、水鏡として論じられることがあります。
カガミイドが記録された民俗資料
妖怪名彙に寄す
辰井隆が『民間伝承』5巻5号(1940年)に載せた中心資料です。
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カガミイドについてよくある質問
カガミイドとはどんな妖怪ですか。
大阪府三島郡の森の奥にある井戸です。住吉の漁師が鯛をとると、その鱗が映るといわれました。
なぜ住吉の鯛が映るのですか。
理由は記録されていません。海辺の出来事が内陸の井戸に映るという形だけが伝えられています。
井戸から何か出てきますか。
出てくるという記録はありません。映るという性質だけが語られています。
今もある井戸ですか。
資料に現在地の記載はありません。記録は「京の藪」という森の奥の落窪と記すだけです。
カガミイドと併せて覚えたい言葉・用語
落窪(おちくぼ)
まわりより低くくぼんだ地形。井戸があるとされた場所です。
住吉(すみよし)
大阪湾に面した海辺の地。ここの漁師の鯛が映るとされました。
三島郡磐手村(みしまぐんいわてむら)
記録が示す旧村名。現在の大阪府茨木市にあたります。
カガミイドの参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。