福島県平田村で、初午の前日に供えた玉子の中身がきれいに取られていたという。

Altomarina 「平田村役場(福島県石川郡平田村)」 2011年 / CC BY-SA 3.0 出典
稲荷の主とはどんな妖怪か
稲荷の主はひとことで言えば、供え物を食べる主です。福島県石川郡平田村の話です。
国際日本文化研究センターの怪異・妖怪伝承データベースは、東洋大学民俗研究会『小平の民俗―福島県石川郡平田村旧小平村―』(1975年、291頁)の「口承文芸」を典拠に、昔は初午の前日にみがき玉子を稲荷様に上げておくと、殻が割られて中身がきれいにとられていた。稲荷の主が食べるのだといわれたと記します。
初午は、二月の最初の午の日で、稲荷の祭日です。全国の稲荷社で祭りが行われます。
みがき玉子は、殻を拭き清めた卵とみられます。稲荷への供え物として、油揚げとともによく知られます。
殻が割られ、中身だけがきれいに取られていた——その形が、主のしわざとされました。
稲荷の主の漢字表記と読み方
読みは「いなりのぬし」です。
「主」は、その場所に棲みついた特別な存在を指す語です。池の主、沼の主と同じ使い方です。
稲荷の社に棲む主、という言い方になります。狐とは書かれていませんが、稲荷の神使は狐とされてきました。
稲荷の主(いなりのぬし)
日文研データベースが示す漢字表記。
イナリノヌシ(いなりのぬし)
同データベースの呼称読み。
稲荷の主の姿と特徴
稲荷の主に姿はありません。記録にあるのは、供え物の変化です。
時 … 初午の前日。
供えるもの … みがき玉子。
翌日の様子 … 殻が割られ、中身がきれいに取られている。
説明 … 稲荷の主が食べるのだといわれた。
姿を見たという記述はありません。
社の名や場所も書かれていません。
稲荷の主の伝承記録
初午の前日に供える
初午は、二月の最初の午の日です。稲荷の祭日にあたります。
その前日に、みがき玉子を供えました。
祭りの日ではなく、前日である点が具体的です。 一晩置いて、翌朝に確かめる形になります。
そして、殻が割られていました。
中身だけが、きれいに取られる
記録は、中身がきれいにとられていたと書きます。
散らかっていたとは書かれていません。 きれいという一語が、主のしわざという受け取りを支えています。
荒らされたのなら、獣のしわざと思うでしょう。 そう見えなかったからこそ、主が食べたと語られました。
供えたものが受け取られた——祭りが通じたしるしでもあります。
稲荷の主の伝承地域
公的データベースの地域欄は福島県石川郡平田村を示します。報告は旧小平村の調査です。
社の位置は書かれていないため、地図で指せるのは村の範囲までです。
稲荷の主の正体と考えられているもの
稲荷の主の正体は書かれていません。
狐とも、神そのものとも記されていません。
稲荷の神使は狐とされてきました。供え物が減っているとき、狐が食べたと考えるのは自然です。
しかし記録は、狐ではなく「主」と呼びます。 その社に棲みついたものという受け取り方です。
残ったのは、割られた殻と、きれいに空になった中身です。
稲荷の主が記録された資料
稲荷の主を単独で扱った本は見当たりません。読めるのは大学の調査報告書です。
初午と稲荷の供え物については、民俗行事を扱った本が数多くあります。卵を供える例は各地にあり、併せて読むと背景が見えます。
稲荷の主が記録された民俗資料
小平の民俗―福島県石川郡平田村旧小平村―
東洋大学民俗研究会が1975年にまとめた調査報告です。
Amazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。
稲荷の主についてよくある質問
稲荷の主とは何ですか。
福島県平田村で、初午の前日に供えた玉子の中身を食べるとされたものです。
狐のことですか。
記録に狐とは書かれていません。稲荷の社に棲む「主」とだけ記されています。
いつ供えるのですか。
初午の前日です。初午は二月の最初の午の日で、稲荷の祭日にあたります。
今も行われていますか。
記録は「昔は」と書いています。1975年の報告で、当時すでに過去の習わしとして語られています。
稲荷の主と併せて覚えたい言葉・用語
初午(はつうま)
二月の最初の午の日。稲荷の祭日です。
みがき玉子(みがきたまご)
殻を拭き清めた卵。稲荷への供え物とされました。
主(ぬし)
その場所に棲みついた特別な存在を指す語です。
稲荷の主の参考資料
この記事は、以下の公的・学術資料をもとに構成しています。